眼鏡屋の丁稚(でっち)|玉水屋電子資料館

丁稚とは…

住込みや結婚、婚約についても…

眼鏡屋の丁稚

〔写真=眼鏡屋の丁稚(明治43年頃)〕

 眼鏡屋にも江戸・明治時代から第二次世界大戦の終結まで、「丁稚」という商店主育成制度がありました。ここでは眼鏡屋に伝わる戦前(昭和)の「店員手帳」と「清規」の中から、当時の丁稚制度がどのようなものであったのか、少しだけご紹介致しましょう。


玉水屋清規

期間
在店期間ハ十ケ年トシ、コレヲ前後二期ニ分ツ。
前期 ― 入店ノ年十六歳四月ヨリ徴兵適齢ノ二十一歳三月マデ。
後期 ― 二十一歳四月ヨリ二十六歳十二月マデ。
階級
見習店員 前期間中
店員 後期間中
上級店員 前後二期ヲ終了シ、引続キ勤務スル者
幹部店員 十五ケ年以上勤務シタル者
職責
見習店員ハ本業ノ技術習得ト共ニ販売実務ニ従事スルモノトス。
店員ハスベテ店ノ中堅トシテ技術練磨ヲ計ルト共ニ販売に従事スルモノトス。
上級店員ハ店員、見習店員ヲ指導シテ仕入、販売ニ従事スルモノトス。
幹部店員ハ店主ニ代リテ全店員ヲ統率・指導シ、経営全般ニ参与スルモノトス。
給料・賞与・満期手当
給料・賞与ハ別表ノ如ク定ム。賞与は毎年六月、十二月ノ定期二回ニ興フ。但シ欠勤日数多キ時ハ賞与ヲ減額スルコトアルベシ。特別賞与ハ、毎年一回期末ニソノ年次ノ営業成績ト各自精励ノ程度ヲ考慮シテ支給ス。満期手当ハ金二百円トス。
待遇
見習店員、店員ハスベテ住込トス。見習店員ノ被服、食住費ハ店持トシ、店員級ハ被服費ノミ店持トシ、食費ハ給料ヨリ控除スルモノトス。
上級店員、幹部店員ハ被服食住費スベテ自辨トシ通勤ヲ認ム。但シ市内ニ居住スルヲ要ス。
積立貯金
見習店員、店員ハ月々ソノ支給金ノ内ヨリ別表ニ定ムル如ク一定額ヲ銀行積立貯金トスルモノトス。
幹部店員、上級店員ハ月給、賞与ノ一割ヲ積立スルモノトス。
積立金ノ預入ハ凡テ本人名儀ヲ以テスルモ、通帳ハ店主之レヲ保管シ、退店ノ際ニ交附スルモノトス。但シ上級店員、幹部店員ニアリテハ妻帯及ビ住宅ニ必要ナル費用トシテ積立金ノ半額マデノ支出ヲ認ム。(積立金ハ総額千百五十八円、他ニ賞与特別賞与満期手当ヲ加算スル時ハ概算二千円以上トナルヲ普通トス。)
病気・負傷
見習店員ハ軽微ナル病気・負傷ノ場合ハ、店ノ費用ヲ以テ医療ヲ受ケサセルモ、休業一ケ月以上ニ及ブ場合ハ帰休ノ上静養スルモノトス。店員級以上は自費医療。
病中手当 二ヶ月マデ給料全額支給。以後二ヶ月マデ半額。以後停止。
兵役
店員ガ兵役ニ服シタル場合ハ、該当期間ノ二分ノ一ヲ延長シ勤務スルモノトス。
入営中ノ手当トシテ、月給ノ三分ノ一ヲ支給シ、ソノ全額ヲ積立貯金トス。
結婚
結婚ハ二十七歳以上ニ達シタル場合。男女店員間の婚約ヲ認メズ。
慶・弔
兵役―入営ニ際シ餞別トシテ金一封ヲ呈上。
結婚―紋付羽織・袴を贈呈。
不幸―両親妻子不幸ノ際ハ弔慰金ヲ贈ル。
営業時間
四、五、六月―午前八時ヨリ午後十時迄。
七、八、九月―午前七時半ヨリ午後十時迄。
十二、一、二、三月―午前八時半ヨリ午後十時迄。
但シ特別ノ場合ハ延長スルモノトス。営業時間中ハ無断外出厳禁。
退店
前後二期ヲ終了シ、退店スル場合ハ、別ニ定ムル満期手当金を支給ス。
疾病ソノ他ノ理由ニヨリ休業六ケ月以上ニ及ブ場合ハ退店ト見做ス。
怠惰ニシテ店務ニ精勤セズ、店則ニ違反シ或ヒハ不行跡ノ行為アリタル場合ハ退店ヲ命ズ。
其他
購買規定 店員ガ店ノ商品ヲ購買スル場合ハ、ソノ原価ニ一割ノ金額ヲ加算シタル値段ヲ以テス。
表彰 満十カ年以上勤続シタルモノハ同業組合ヨリ表彰サル。
修養 青年学校に通学ヲ許シ、講習会等ニ出席セシメ、又ハ旅行見学ヲセシム。
十カ年給与表
(略)
備考
積立金ハ月々給料ノ内ヨリ所定額ヲ差引キ積立貯金とナス。後期ニアリテハ食費ヲ自弁トナスヲ以テ月々給料ヨリ控除ス。経済事情ニ甚シキ変動アル場合ハ給料ソノ他ニ就キ変更スルコトアルベシ。

tamamizuya

丁稚制度は第二次世界大戦後、GHQの指令により労働法規が整備されたことや義務教育の年限が9年に延長された結果、「長期間の住み込みによる衣食住以外は無給に近い労働」という丁稚奉公のスタイルを維持することが困難になりました。丁稚を採用していた企業は近代的な契約による従業員に衣替えさせ、これにより200年以上の歴史を持っていた丁稚制度は消滅しました。